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質問への回答

武器を所持する相手には?

こんにちは。以下は講座でいただいたご質問とご返答の、ブログでの再現です。

もし加害者が武器を持っていたら、どうしたらいいんですか?

***

A.

加害者はなぜ、武器を持っているのかを考えてみましょうか。

 こちらに確実な身体的ダメージを与えるためだろうか?
…だとしたら、おそらく即座に使うだろうなぁ…。


多くの場合は、威嚇と加害者自身の自己防衛のためと思われます。ということは、あちらには、“武器を持ち出すというハイリスクを侵してでも、成し遂げたい目的”がある。あるいは、“そのようなハイリスクを侵してでも、守りたい何か”があります。

相手にとって、その目的や守りたい何かは、いわば急所です。



WEN-DOでは講座での実技練習の際、常に急所を意識します。武器対応の場合も、急所を意識するという意味では同じで、特別なことをするわけではありません。



ただ、武器は危険なもの。ですから、相手が武器を使おうとしていない限りは、武器を持つ“身体部位の急所”への反撃は行なわないほうが良いでしょう。

それよりも、“情緒的な急所への働きかけ”を行なっていくのですね。

というわけで、
武器を所持する相手への基本的な対応は『交渉』です。


・相手が武器を使う気持ちや使う必要を感じなくするように、
・反撃のスキやチャンスをつくる時間稼ぎのために、
・思いがけない事故(負傷)を防ぐために
・自分自身を落ちつかせるためにも

『言語的な(口頭の言葉やボディランゲージなど、あらゆる言語での)対応』を心掛けます。



                
               * * *



《 言語的な対応には2種あります 》

 厳密に言うと、言語的な対応は2種類あります。
(2種が混ざり合っていることも多いです。)

 ひとつは『交渉』=ネゴシエーションで、

 もうひとつは『沈静化(興奮の抑制)』=ディエスカレーションです。


               * * *


 成功の可能性が高い言語対応の基本は、
こちらが相手の言う通りにする(かもしれない)と“相手に期待させる”こと。

 わかりやすい例では、金銭目当ての泥棒などに対しては、お金さえあげてしまえば、加害者は逃走してくれるかもしれません。

(**例外もありまして、外国人の窃盗団は比較的、単なる金品強奪のためでも人をためらわずに殺傷する傾向が強いと言われます。国外逃亡まで見通しての計画的行為が多いこともありますし、そもそも日本人と美学や哲学が異なっているのかも)


 相手が興奮して咄嗟に手近なものを武器として持ち出してきた場合、こんな風に言うのも試す価値があります。

「あなたの言うことはよくわかった。応じたいと思う。私が悪かった。心から謝る。けれど、今はそのナイフがとにかく怖くて、つい大声を出してしまいかねない。大声を出すと周囲に感づかれるかもしれないけど、そんなことにはなりたくないでしょう? だから、ナイフは手放してほしい」
(この発言が本当の気持ちでもその場しのぎのウソでも構いません)

 ↑『交渉』にあたる部分です。
  加害者は、周囲に知られてしまうことを大変におそれます。


そして(少し高度ですが)加害者に
『武器を使うか使わないかは、あなた次第。(私はあなたに指示もしないし命令もしない。あなたを身体的にも精神的にも、傷つけようとは思っていない)』という姿勢を示します。

 ↑『沈静化』にあたる部分です。
  加害者は、「やられる前にやらなければ」と自己防衛心が強いことが多いのです。



               * * *



何よりも、相手に話すことは、自分をパニックから救います。


「そんなときに、ペラペラと話せるわけがない」と思う方もいると思います。ある意味でそれは事実です。

 でも、これまでWEN-DOに参加し体験談を聴かせてくださった女性たちによると、話せるかどうかではなく、“話そうと心掛けること自体が有効”なのだそうです。

 人は、自分が今この瞬間に成すべきことをわかっていれば、『一体全体どうすればいいの?!』と自分を見失わずに済み、それはボディランゲージとなって表われるからかもしれませんね。また、話すことで自然と呼吸が保たれる効果は絶大です。



『交渉』や『沈静化』など細かいポイントを忘れても構いません。とにかく、相手に話しかけ、声を出しつづけることが、まず第1に大切です。





《 言語的な対応のポイント 》


・低いトーンのゆっくりした口調で
(高い声や速めの口調は人を苛立たせがちですが、低いトーンのゆっくりした口調は、聞く側を落ちつかせやすい上、あちらには『こいつ動じてないな…』という印象を与えやすいです。自然と下腹部に力が入って自分の腰がすわるという効果もあります)

・ 相手にも時折発言の機会を与えながら
(「あなたには口を挟ませない」という勢いで一方的に話されると、人は誰でも苛立ちます)、

・相手にも自分にも時間を与え(加害者が武器を手放すことを急かさない)、

・どんな反撃のチャンスがあるか、何が使えるかを考えながら
(手近に何か相手に投げられるものがあるかどうかを探したり、出入口までどのくらいで辿り着けるか考えてみたり、周囲に人がいるかどうかを思い出したり、もし相手が近づいてきたら自分はどのように動くか、などをイメージしながら)、

・相手を挑発するような言動を取らず、

・相手のペースや誘導に乗らず、主体的に会話をします。


               * * *


交渉はトレーニング次第で誰でも上達するスキルですから、ぜひ普段練習してみてください。心の中でシミュレーションするだけでもしないよりいいかも。


交渉がうまく行って、相手が武器を手放したら…。チャンスを見つけ、WEN-DOの各種技で逃げるための時間を作ります。あるいは、“この状況の中ではこれがベスト”と思われる選択をします。


加害者が武器を手放さず、ナイフなどを振りかざしてきた場合は、身体的なスキルで防御・反撃します。これについては実際の講座で、いつかご一緒しましょう。



次回、「相手が武器を使用しようとしてきた場合」の対処法について続きます。

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by selfdefence | 2006-04-25 17:52 | 質問への回答

ふくだゆいです。自己表現や思考スキル、日本語の講師です。20年以上前のある日、声をあげたら、『蓋』が開いたんです。びっくりでした。蓋の存在にすら気づいていなかったので。以来、困ったときには探すようになりました。どんな声でどんな蓋を外したらいいのだろう?と。基本閉じていてひとりの時間が好きな私でも、声探しに助けが欲しくなることがあります。声探しの場を求める人と繋がれたら嬉しいです。


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