Wen-Doインストラクターの福多唯です。
ひとつ前の記事で、「境界侵害にNOを示す5つの方法」をご紹介しました。
今日はその中の『壊れたレコード(オウム返し と言われることもあるかも)』の
具体的なポイントをご紹介します。
これはセルフディフェンスでは
《ストップハンド(やめ手)》とあわせて紹介されることもしばしばで、
使いこなせるようになると、かなり強力で便利です♪
* * * * *
あるかた(Tさん)がロールプレイで取り組んだと過程して、
そのStepを紹介してみましょう。
(過去に私が実際に体験した例を複数とりまぜて作ってます。
どなたかの練習や体験をそのままここに書いているものではありません)
1)まずは通常の自分のモードで断ってみる。
2人組になり、
《何かを 誘いたい/売りたい/頼みたい と強く思っている人》の役と
《それを断る》練習をする役を決めます。
それから、誘う/売る/頼む をしようとしてくる人の言葉に対して、
とりあえずは普段の自分のままで、断ろうとしてみます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
仮に、Tさんが、この練習に取り組んだとしましょう。相手役はSさんです。
Sさんは『娘がピアノの発表会に出るの。無料招待チケットがあるから、ぜひ来て』と渡そうとします。
Tさんは、「ああ、そうなんだ〜。いつ?…日曜日かぁ。ごめん、私日曜日はちょっと…」。
S『発表会って2年に一度きりの機会なの。多くの人の前で演奏する経験を積ませてあげたいの』
T「ホントにごめんね。その日曜日はちょっと…」
S『娘の出番の時間だけでいいから。ね? そしたらほんの10分程度だし』
T「(ほんの10分と言われて困る)その時間って何時頃?…って聞いちゃダメですよね。
うわあー。どうしよう。つい相手に巻き込まれちゃう〜^^;;」
2)私の本当の気持ちを確認する。
そこでいったんロールプレイは辞めて、考えてみることにしました。
相手役(誘う側)をしていたSさんがTさんにご提案をなさいました。
S『日曜日は、っておっしゃっていたから、そのセリフを繰り返そうとしたんですよね?
語尾までしっかり言えば良かったんじゃないかな。
例えば、日曜日は行けないんです。とか。そうしたら私にもっと強く伝わったかも』
T「確かに語尾が曖昧だとつけこまれやすくなりますねぇ」
そこで、私(Y)からもひとつTさんにお尋ねしてみました。
Y〔日曜日でなかったら行けるのに!と、行きたい気持ちを持っていらっしゃいました?〕
T「…いえ、正直言ってそれはないです(笑)」
Y〔何曜日であろうと、行きたくなかったんですね。
じゃあ、行きたくない っていうその気持ちを、別の言い方で言えそうですか?
行きたくないのは、どんな理由で? 例えば、忙しいから? 疲れてるから?〕
T「…(考えてみる)。 興味がない、かな」
Y〔なるほど! いいですね。〕
3)私の本当の気持ちにぴったりな言い方を探す。
Y〔では、ここからまた次の段階です。
「興味がない」と相手に言えそうかどうかを今度は考えましょう。
さっき語尾の話をしてましたよね。語尾まで明確にするのは確かに大事です。
同時に、語尾を明確にした言い方が自分にとってしっくりくるかどうかも大事です。
例えば
「興味を持っていないのです」と言うのも良いでしょうし
「興味を持っていないので(^^)」というほうがしっくりくるのかも?と
もうちょっと検討してみましょうか〕
T「…(しばらく考える)。
…興味がない って言葉自体が、あまり言いたくないです。
なんか冷たい感じがして」
Y〔そうなんですね。そしたら無理をしないでいいので、
興味がない ってことを言い表せる他の言葉や言い回しを探しましょう〕
T「…。面白いと思えない…はなんか違うな(笑)。そうなんだけど、余計冷たいですよね。
ええと…。心を惹かれないというか、関心が向かないっていうか。
☆! そう! 関心がないんです!」
Y〔きましたね!
じゃあ、関心がないっていう気持ちを、語尾まで明確にして、どう言ったらいいかな?〕
T「関心がないんです。
関心がありません。
関心を持ってないので。
関心を持てないので。
今はそこに関心がないんです。
(と、独り言のようにいくつかおっしゃってみているTさん)
…あ! 今は をつけると、なんかいい感じです♪ つけてもいいんでしょうか?」
Y〔もちろんです。そこが大事なのがわかったんですね。大事だと感じるものを使えるといいですよね〕
T「そしたら…(心の中で試してみている様子)…
日曜日は…ってやんわり断ってみてもダメだったら、
今は関心がないから、今回はごめんなさいね。 にしようかな。
唯さん、それでもいいんですか?
それとも最初から同じセリフで繰り返しの方法を使うほうがいいんでしょうか?」
Y〔自分の気持ちに添う方法が一番強いです。
そうでないと相手の出方次第で気持ちがグラッと揺れちゃうの。
Tさんはどちらにしたい感じ?〕
T「最初は遠回しに言いたいです。いきなり関心がないって言うのもアレなんで」
Y〔じゃあ、自分のその声に正直に、自信を持ったらいいと思います(^^)〕
T「(Sさんに)じゃあ、今度はそんな風にしてみようと思います」
S『わかりました♪』
4)自分の本当の気持ちを言い表せる言い方が見つかったら、再度ロールプレイで確認。
S『娘がピアノの発表会に出るの。無料招待チケットがあるから、ぜひ来て』
T「そうなんだ。おめでとう。招待もありがとう。
でも私ね、日曜日はあまり外出したくないの」
S『娘の出番の時間だけでいいの。ほんの10分程度よ?』
T「今はピアノにあまり関心がないんです。ごめんね」
S『どうして? 音楽は嫌い?』
T「今はあまり関心がないんです。ごめんね」
S『子どもの演奏レベルだから気がすすまないのかしら?』
T「今はあまり関心がないんです。ごめんね」
S『来てみれば楽しいよ、きっと☆』
T「今はあまり関心がないんです。ごめんね」
S『…うー、もうダメです、これ以上は誘えないし誘う気が出せない感じ(笑)』
Y〔お疲れさまです。じゃあここまでにして振り返りにしましょう。
まずはTさん、今どんな感じ?(^^)〕
5)ロールプレイをやってみた人+相手役をした人+オブザーバー(見学者)だった人とで振り返る。
T「やる前は、同じセリフだけを繰り返すなんて、
機械的だしなんか変なのって正直思ってたんですけど(笑)、
すっごくスッキリしました。機械的どころか、言えたー!!って感じ。
自分の気持ちが言いたい言葉で言えると、繰り返しても、自分には違和感は全くないです。
Sさんはどうでしたか?」
S『最初のやりとりでは、ゴリ押しすれば行けそうって思ったけど(笑)
さっきのは、もう無理だとすぐにわかりました。一応ロールプレイなので頑張ったけど、
実際のやりとりならすぐに、あ、そうなのね、ってなると思う。
なんていうか、Tさんの顔が違うの。同じ人なんだけど(笑)。
ごめんねって言ってるけど、そうは思ってないなっていうか(笑)、
そのゴメンねは私への思いやりとしての言葉で、
Tさんが自分のしていることをすまないことだと思ってるわけじゃないのが伝わってくるので、
つけ込む部分がなかったです」
Y〔スッキリしたお顔! おめでとうございます。良かったですね〜。
今後のために覚えておくと役立つかもしれないことをひとつ付け加えさせていただくと、
同じセリフで断っても相手がまだ言葉をかぶせてくるときには、
2回か3回繰り返した後は、黙っていても大丈夫ですよ。〕
* * * * *
と、こんな感じです。
壊れたレコード法(同じセリフを繰り返す)でないとしても、
基本的にはアサーションでは、似たようなStepを踏むものだと私は考えています。
1)自分の普段の対応やコミュニケーションの癖を一度見てみてから、
2)心の中で思っていたこと、言いたかったけど抑えたことは何かな?と考えて、
誰にも言わなくていいので、ネガティブでもなんでも、本当の気持ちを見つけます。
3)本当の気持ちを、言葉で言い表すには、どんな言い回しがいいかな?と探します。
ぴったりくるものが出てくるまでここは妥協しないほうがいいです。
語尾、付け加えたい一言があるかどうか(Tさんの「今は」など)も考慮します。
4)それを試しに言ってみて、心身がスッキリするかどうか確認します。
スッキリしきれてないときや、もう一歩、というときには、
どこがどうなればいいかなと再度探します。
不思議なことに、ロールプレイだとしても(リアルなやりとりではないとしても)、
自分の気持ちを言い表しやすい一言が一度見つかると、
異なる相手、状況等でも、芋づる式に、自分にとってのピッタリな言い方が見つかりやすくなります。
『毎回、こんなプロセスを踏むなんて大変そう〜』と思う人もいるかもしれないけど、
実際にはそうはなりません。
むしろ、やればやるほど楽になります。